タイトルも一風変わっていますが 何より内容です。
とてもとても意欲的な作品で この原作を音声化した製作陣に敬意を表します。
もちろん CASTの皆さまにも大大感謝です。
とにかく 一度は聴いていただきたい作品です。
原作:木原音瀬(Narise Konohara)
イラスト:依田沙江美
発売元:インターコミュニケーションズ/2008年
CAST:谷山紀章(佐竹亮一郎)×岸尾だいすけ(田中徳馬)
/高橋広樹(原)/間宮康弘(峰倉教授)
■■■■■about story
主人である亮一郎と口をきけない徳馬の物語です。
まだ 亮一郎が幼かった頃 大病を患います。それは出先にいる父親を呼び戻すほど重く 生死に関わる状況でした。
使用人の子である徳馬は屋根の上を見つめています。そこへ亮一郎の母親がやってきます。
彼女には屋根の上にいるものが大蜘蛛に見えるといい 徳馬は大きな白い蛇に見えるといいます。どうやら二人には 他の人間には見えないものが見えているようです。
屋根の上の物に”子供を絶対に渡さない”と言い切った亮一郎の母は 意を決し こっそりとどこかへ向かいます。そこは沼神様のもとでした。亮一郎を助けてもらうことを約束し 自らの命を沼神様に捧げたのです。
隠れてそれを見ていた徳馬は思わず沼神様の前に出ていきます。小さい亮一郎のために形見を分けて欲しいと訴えます。その代わりに ある約束を沼神様と交わしました。
そして時は流れます。立派になった亮一郎は東京の帝大で助手として学問三昧の日々。
大病を患った後 母がいなくなり寂しい思いをした亮一郎を支えているのは昔も今も徳馬です。ただ その徳馬も亮一郎の病後 何故か言葉を発することができなくなっていました。
そんな徳馬に恋心を抱いていることを 亮一郎は中学の頃から自覚していました。大人になるほどに徳馬を手放すことなどできなくなり 東京にまで連れてきているのです。
ある日 傘を届けに来た徳馬が”表門には悪いモノがいるので帰りは裏門を使うように”と告げます。
物の怪の類は信じない亮一郎ですが徳馬の言うことには絶対の信頼を置いています。
それならばそれを他の者に教えてやろうと言う亮一郎ですが徳馬はそれを止めます。
自分だけが知っているのは不公平だと言う亮一郎に”知るも知らぬも憑くも憑かぬもその方の運”と徳馬は答えます。
それに対して”身のうちに鬼を飼っているからそんなに薄情なのか”と亮一郎は詰ります。その言葉にうなだれる徳馬の姿を見て さすがに亮一郎も言い過ぎたと反省するのです。
CD版ではほとんど触れられていませんが 徳馬は鬼を飼っています。手のひらから出てくるほどの子鬼です。
この鬼を飼っていることを徳馬はかなり後ろめたく感じているようです。
(原作は3章で構成され本作は第1章。第2章では 徳馬の鬼である”桑葉”が活躍するので このあたりの心情が詳しく描かれています。とても面白いお話しですので 興味のある方は是非読んでみてください。学生の原くんも活躍(!?)しますよ)
しばらくの後 同じ研究室の助手である福島が女郎に入れ込んだ末に 出奔してしまう事件が起きます。
これは”例の表門の悪いモノのせいなのか”と亮一郎に問われた徳馬は”実は福島にはすでに狐が憑いていた”のだと応えます。
その言葉がまた亮一郎を怒らせてしまいます。”何故福島に教えてやらなかったのか 福島や細君が不憫ではないのか”と激怒します。
この二人のやり取りに女中が”福島は亮一郎の知り合いで徳馬の知り合いではない。徳馬が見た悪い物は全て祓ってやらなければならない道理はない”というようなことを言い 亮一郎の自身の言葉の理不尽さを言い当て 徳馬に助け舟を出すのです。
実は 原作ではこの会話は徳馬と亮一郎の二人が筆談で交わしてていたものです。
かなり長い会話なので 亮一郎の独白ばかりになってしまい わかりにくくなることを避けたのでしょうか。実際 この脚色はとても良かったと思います。結果的にわかりやすくなりました。
さて この日を境に亮一郎と徳馬の関係がこじれてしまいます。徳馬は亮一郎の元を離れようとし亮一郎は手放すまいと必死になります。
そんなとき亮一郎の実家が火事で父親が亡くなったという知らせが入り 急遽徳馬と二人実家へと戻ります。
そこで聞かされた話は亮一郎にとっては驚き以外の何物でもありませんでした。
裕福だったはずの実家は莫大な借金を抱えているというのです。その借金の返済に資産家の娘と結婚しろと。。。父が亡くなったばかりだというのに です。
舞台は明治時代です。この時代は家制度や封建主義が尊重される時代でした。
西欧諸国の倫理観と古来の武士道が合わさった 独特の純潔主義が生まれた時期でもあります。個よりも公。自分よりも家や社会を大切にし優先することが当然とされました。
恋愛に関していえば 自由恋愛などは以ての外。家柄が良ければ良いほど 家長の決めた相手と結婚をしなければならず お見合いすることは当たり前な時代です。
亮一郎は戸惑います。 両親に去られ 家の借金 自身の結婚問題に直面し 抑えていた徳馬への思いが唐突にあふれ出ます。
夕景の中で思わず接吻(接吻!わぉ!久しぶりに聞く言葉です)をしてしまう亮一郎。
牛追い神事が近づいたころ ご神体の牛を盗んだ咎で徳馬が警察に捕まります。ことの真偽を確かめるために亮一郎は警察へ急ぐのです。
牢の中にいる徳馬はやつれていましたが 亮一郎を驚かせることがありました。声が出るのです。徳馬に言わせれば”声が戻った”のです。
”戻った”理由と牛を盗んだ訳を途切れ途切れに話す徳馬の様子に 亮一郎は徳馬が死ぬ気なのではないかと疑いを持ちます。
そこで亮一郎は徳馬を連れていく決意をするのです。。。そして
■■■■◆about music
昔のお話しだからでしょうか BGMは今風ではなく ちょっと芝居がかった感じがします。
人ならざる者が出てくる設定であったり 当時の雰囲気やを出すための演出だとは思うのですが もう少し自然な感じでも良かったように思います。
二人の心情を表すシーンに流れる物悲しい曲をテーマに 静かな雰囲気の曲を多用しても物語の空気が壊れることは無かったように思います。
■■■◆◆about design
さて CD版のジャケットと文庫本の装丁を比べてみましょう。
昔のお話しだからでしょうか BGMは今風ではなく ちょっと芝居がかった感じがします。
人ならざる者が出てくる設定であったり 当時の雰囲気やを出すための演出だとは思うのですが もう少し自然な感じでも良かったように思います。
二人の心情を表すシーンに流れる物悲しい曲をテーマに 静かな雰囲気の曲を多用しても物語の空気が壊れることは無かったように思います。
■■■◆◆about design
蒼竜社 |
さて CD版のジャケットと文庫本の装丁を比べてみましょう。
文字のレイアウトが違うだけで他はほぼ同じのようです。
多分イラストは文庫本のものを そのままCDに使ったのだと思われます。
では何故こんなに印象が違うのでしょうか。
CD版では 文庫本のイラスト下部がバッサリ切られているからです。
これは文庫本とCDの縦横の長さの違いからくるものです。転用する場合には 良くあることではあります。
ただ。。。この花は”ミゾソバ”です。母の象徴でもある花なのです。
物語の中で 亮一郎が”母の爪のようだ”と大切にした花。
そして ”母の爪”のせいで徳馬は縛られ苦しむことになります。
依田沙江美さんのイラストがとても素晴らしいだけに 物語の中で重要な要素であるこの花がカットされてしまった CD版。。。
残念でなりません。
■■◆◆◆about impressions
半分ほど書き込んだところで全てとばしてしまいました…( ノД`)
ショックでしばらくの間ブログを開くことができず かなりへこみました ホント。。。そうだ 保存しよう!保存だ保存!!忘れちゃイカンっ!!!
えと。。。 ”牛泥棒”ですね…
そうです我儘なご主人様気質の亮一郎と優しい徳馬。二人の関係はしっかりと絆が築かれていてうらやましいですね。
特に亮一郎。徳馬に絶対の信頼を置いています。それは亮一郎の真っすぐさの裏返しなのだろうなと思います。ここがぶれないから徳馬もついて行けるのですよね。それがなかったら単なるワガママ坊やですものね。
徳馬はといえば これまた一途に亮一郎を想っています。二十年もの間捧げ物をし続け自分の声を失うほどに です。
ワガママではありますが亮一郎は理性的です。主従関係を盾に強引に体の関係を結ぼうとせずあくまでも心が欲しいと自分を抑え相手を思いやる気持。
触って欲しいのに誘うこともできずにじっと待つだけの徳馬。
こんな風に抑えた互いの感情が美しい物語を紡ぐのですね。
そして 二人の気持ちがわかれば それはもう行きつくところに行きつくわけですよ。
初めての行為だというのに 今までガマンしていた分亮一郎はけっこうSっ気が出てます(笑)言葉攻めの傾向アリ です(笑)
まあ 徳馬も徳馬です。突然にキス…あ 接吻でしたね。されたあとに亮一郎が触れてくれるのを待ってたと。。。しかも 下半身むき出し状態で!?
欲しくて仕方なかった相手をモノにできて その相手が腕の中にいる。そんな状態で言われたら亮一郎じゃなくたって頭に血が上ります。
それでも亮一郎は亮一郎。”生涯そばにいろ 祝言をあげることはできないが 俺のつがいはお前だけだ”なんて言っちゃうんですものね。
まあ ”生涯そばにいろ”とは言いましたが 二人の未来に光がないことは自覚していたと思うんですよ。脱獄したんですものね。
”行けるところまで行く”と言ってるくらいですから捕まるだろうとは思っているのでしょう。だからこれは二人にとっての道行なのだな と思いました。
当時の感覚としては 道行=駆け落ち=許されない関係=死
結果として 事件はあやふやに終わり 全てがうまくおさまり 二人には元の生活が戻ります。ここでCDは終わります。
ですが原作には続きがあります。死をも覚悟した二人のその後。だからこそ第2章がいいのです。
亮一郎は もう徳馬にぞっこんです。徳馬も亮一郎のためなら何でもしようと一生懸命でいじらしくてかわいいのです。そのおかげで徳馬が飼っている子鬼は大忙し。
何故忙しくなるかはここでは書きませんが。。。(それにしても子鬼の桑葉はどんな顔どんな声をしているのでしょう。原作の挿絵にすら出てきません)
なんとか続編はできないものでしょうか。そうすれば原くんの出番も増えるのになぁ。
最後に。。。この作品は静かな場所で聞いてくださいね。
徳馬は話す代わりに 溜息だったり衣擦れの音だったり体に触れる音だったりの微かな音で表現をしています。それがシーンを想起させてくれるのです。
ですから どんな音も聞き漏らさないよう細心の注意を払って下さるようにお願いします。
そして 二人の独特な世界をお楽しみください。
残念でなりません。
■■◆◆◆about impressions
半分ほど書き込んだところで全てとばしてしまいました…( ノД`)
ショックでしばらくの間ブログを開くことができず かなりへこみました ホント。。。そうだ 保存しよう!保存だ保存!!忘れちゃイカンっ!!!
えと。。。 ”牛泥棒”ですね…
そうです我儘なご主人様気質の亮一郎と優しい徳馬。二人の関係はしっかりと絆が築かれていてうらやましいですね。
特に亮一郎。徳馬に絶対の信頼を置いています。それは亮一郎の真っすぐさの裏返しなのだろうなと思います。ここがぶれないから徳馬もついて行けるのですよね。それがなかったら単なるワガママ坊やですものね。
徳馬はといえば これまた一途に亮一郎を想っています。二十年もの間捧げ物をし続け自分の声を失うほどに です。
ワガママではありますが亮一郎は理性的です。主従関係を盾に強引に体の関係を結ぼうとせずあくまでも心が欲しいと自分を抑え相手を思いやる気持。
触って欲しいのに誘うこともできずにじっと待つだけの徳馬。
こんな風に抑えた互いの感情が美しい物語を紡ぐのですね。
そして 二人の気持ちがわかれば それはもう行きつくところに行きつくわけですよ。
初めての行為だというのに 今までガマンしていた分亮一郎はけっこうSっ気が出てます(笑)言葉攻めの傾向アリ です(笑)
まあ 徳馬も徳馬です。突然にキス…あ 接吻でしたね。されたあとに亮一郎が触れてくれるのを待ってたと。。。しかも 下半身むき出し状態で!?
欲しくて仕方なかった相手をモノにできて その相手が腕の中にいる。そんな状態で言われたら亮一郎じゃなくたって頭に血が上ります。
それでも亮一郎は亮一郎。”生涯そばにいろ 祝言をあげることはできないが 俺のつがいはお前だけだ”なんて言っちゃうんですものね。
まあ ”生涯そばにいろ”とは言いましたが 二人の未来に光がないことは自覚していたと思うんですよ。脱獄したんですものね。
”行けるところまで行く”と言ってるくらいですから捕まるだろうとは思っているのでしょう。だからこれは二人にとっての道行なのだな と思いました。
当時の感覚としては 道行=駆け落ち=許されない関係=死
結果として 事件はあやふやに終わり 全てがうまくおさまり 二人には元の生活が戻ります。ここでCDは終わります。
ですが原作には続きがあります。死をも覚悟した二人のその後。だからこそ第2章がいいのです。
亮一郎は もう徳馬にぞっこんです。徳馬も亮一郎のためなら何でもしようと一生懸命でいじらしくてかわいいのです。そのおかげで徳馬が飼っている子鬼は大忙し。
何故忙しくなるかはここでは書きませんが。。。(それにしても子鬼の桑葉はどんな顔どんな声をしているのでしょう。原作の挿絵にすら出てきません)
なんとか続編はできないものでしょうか。そうすれば原くんの出番も増えるのになぁ。
最後に。。。この作品は静かな場所で聞いてくださいね。
徳馬は話す代わりに 溜息だったり衣擦れの音だったり体に触れる音だったりの微かな音で表現をしています。それがシーンを想起させてくれるのです。
ですから どんな音も聞き漏らさないよう細心の注意を払って下さるようにお願いします。
そして 二人の独特な世界をお楽しみください。