”シグナル”というマンガを読み とても気に入りました。そしてスピンオフである”嵐のあと”という作品があることを知ります。
そこで当然マンガを読み 更にCDへと進みます。もちろんこちらもお気に入り作品の一つとなりました。
ただ 残念なことに”シグナル”のほうはCD化されていません。なので是非ともコミックスを読んでみてください。
”嵐のあと”にはもう1作スピンオフ作品があります。こちらはCD化されています。後日改めてご紹介する予定です。
この関連3作の中心になるのが”嵐のあと”です。
それではまず こちらから。
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「シグナル」 日高ショーコ著 芳文社 花音コミックス |
『嵐のあと』
(Arashi no ato)
原作 :
日高ショーコ(Shoko Hidaka)
発売元 :サイバーフェイズ/2008年
C A S T:森川智之(榊 正彦)
×中村悠一(岡田一樹)
鈴村健一(美山洸平)
■■■■■about story
ではでは お話しは 取引先との酒宴からスタートです。
開始からそんなに時間も経っていないようなのに榊サンはすでに帰りたい様子。
イライラしながらその場にいる女性たちを次々に扱き下ろしていきます。
もちろん 心の声で ですよ。この人随分と細かいところが気になる人種みたいです。
そんなときに少し離れたところに座っているサワヤカ系イイ男に気付きます。
取引先の部長サンにさりげなく聞いてみると部長サンあっさり紹介してくれます。
その男 岡田は自己紹介しながら握手を求めます。
このシーン CDでもちゃんと伝わってくるのです。
すごいですよね。握手の音(?)がかすかに聞こえて ちゃんとイメージできるんです。
それにしてもですよ 初対面の挨拶で握手って 岡田サン。。。いくら名刺を切らしているからっ て言っても 仕事相手の日本人同士ですよ(笑)。あまりにカッコ良すぎでしょ。
もっとも榊サンも負けていません。
この時とばかりにしっかりと岡田サンの指を観察しています。その反応が先の女性たちに対するものとは雲泥の差。
そのあと二人は意気投合。酒宴の席を抜け出して他の店で飲み続けます。その間も榊サンの観察は続きますがノンケであることを確信し残念がります。
この段階で二人の関係が”ゲイとノンケ”であることがハッキリしました。
翌朝 榊サン知らない場所で目を覚まします。散らかった汚い部屋。汚部屋というよりも独り暮らしの男の部屋。岡田の部屋です。
昨夜のことは途中から記憶がなく不安になる榊ですが 岡田曰く”椅子の話しばかり”と笑われます。
その辺りまではいい感じに話す二人でしたが 榊が洗顔する場面で”オカマっぽいね”という不用意な岡田の言葉に榊が過剰に反応して 急に部屋を飛び出します。
カミングアウトするか このまま隠し通すか迷いながら歩く榊に 追いついた岡田は”榊さんのセンスが好きでいつか一緒に仕事をしたいと思っていた”と話します。
岡田にとっては本心だったであろう言葉。それが榊の心に風を吹き込みます。
学生時代の本気の恋。
ノンケ相手にしていた恋を思い出し”強く揺れる気持ちもいつか収まる”と 当時のように このまま友人関係でいることを選択させてしまいます。
榊サン気付いていないようですが もうこの時点ですっかりオチてます。
このあと榊サンの会社の社員が登場します。右腕だと思われる中森サン。できる女です。しかも榊サンと男の趣味が一緒だとか。
ほかの女性社員も男の品定めにノリノリ。
そんなシーンがチョイチョイ出てきます。どんな会社なんでしょうね まったく(笑)。
あ 榊サンの会社は高級家具のお店です。セレクトショップのようですね。海外にも買い付けに行っているみたいです。
さて 岡田と距離を置きたい榊は 岡田との仕事を全面的に中森に任せます。
なので岡田から連絡がはいる筈もないのですが 深夜榊の携帯が鳴ります。知らない電話番号の声の主は岡田でした。
中森との打ち合わせはとっくに終わったというのに 本来なら必要のない業務上の連絡事項をこんな時間に。
しかも榊の店の前から電話しているというのです。そりゃぁ飛んで行きたくなろうってものです。
榊サンてば セフレの美山クンとのお楽しみが終わったばかりだというのに 置き去りにしてタクシーに飛び乗ります。
会う早々岡田に”何故ここにいるのか”と尋ねます。
”ぼぉっとしてて 気付いたらこんな時間で”なんて答えられたら ”あれ?”って思いますよ。
しかも追い打ちをかけるように 来年の仕事の予定を中森経由ではなく 自分の口から直接伝えたかった。
なんて言われたら そりゃ”何で?”と聞きますよ。
はぐらかすような答えは 岡田サンにとっては本心なんでしょうけど 好意を持ってる人間なら平常心でいられないでしょう。
しかもですよ”榊サン甘くていい匂い。どこのブランドなのか 探したけどわからなかった”って 追い打ちをかけます。
岡田サン かなりのモテ男クンのようなのに こんな駆け引きめいたことを不用意に口にするなんて何を考えているんでしょう。
相手が男だから安心していたんでしょうかねぇ。
ついに榊の心に風が吹き キスをしてしまいます。
驚いた岡田は通りかかったタクシーを止め あっという間に立ち去ってしまいました。
翌日夕方は岡田の会社への納品日でした。中森から立ち合いを求められた榊は はっきりとは答えを返しませんでした。
前夜のことを思い 行かないほうがいいと判断したようです。
それでも頭の中は岡田のことばかり。あんなこと こんなことを 次々思い出しては苛立ちます。
夜 納品後の打ち合わせが終わった岡田は 中森を店まで送り届けます。
そこへ美山が通りかかるのですが。。。
このシーン 美山が話しかけるまで長めの間が空きます。
マンガではこの間にあたる部分がとても大切なシーンなのです。
岡田はすぐに車を出さずに思案顔です。一度締めなおしたシートベルトを外し ドアに手をかけたときに美山が声をかけます。
この間 セリフが一言もありません。たった3コマの絵で見せているのですが 岡田の迷いがよくわかります。
そのあと美山と揉めるシーンになるのですが CDではマンガに無いセリフが出てきます。
”車の中でボーっとしちゃってさ店のほう見てたのって何で。深刻そうな顔で何考えてたの”という美山のセリフです。
これでセリフの無かったマンガのコマ部分が さりげなく説明されました。
更に 中森が車を下りるシーンでも”榊サンは……”と 岡田に言わせています。
これもマンガにはありません。でも これで岡田が榊を気にしていることがはっきりとわかりました。
前にも書きましたが マンガには絵で見せるコマが多用されます。そのコマが重要なことも多いですよね。
そういった 音の無いシーンをどう音声化するか。そこがCDの出来映えを左右する…と 言ったら言い過ぎでしょうか。
逆に ここは是非音声化して欲しかった けどスルー な箇所があります。
前のシーンの最後に 榊に”さよなら”と言われた岡田は仕事中も榊のことを考えています。
回想シーンは 初めて出会った日に行った最後の店です。女の子たちを帰らせた後のこと。酔いつぶれた榊が岡田の肩にもたれて眠ってしまいます。
このシーンでは岡田の視線の変化や 肩にもたれかかったことで榊の香りに気付く 箇所があるのですが何故か触れられていません。
確かに説明なしに音だけ聞いても話は成立するのですが 私としてはちょっと残念に思えてなりません。
さて この後 最初の日に出会った女の子から岡田に誘いの電話が入ります。一旦はOKする岡田でしたが 榊と二人で会いたがっている子がいると言われ 態度が急変します。
榊には好きな人がいるから希望に添えない やはり自分も行かないと。
そして また夜遅くに榊の電話に岡田から連絡が入ります。”俺のアパートに忘れ物があります。すぐに来てください”
嘘だとわかっていても急いで向かう榊。”試されているとわかっていても嫌いじゃないから困る”
”何も考えずに踏み込んでくる。友達ごっこは俺にはできない”榊の言い分です。
”避けて逃げて何も無かったことにしようとするのか”岡田が詰め寄ります。
”俺とあなたの気持が重なることを考えてみてよ”岡田の言葉に榊が大きく揺らぎます。
そして。。。
■■■■◆about music
初対面の二人が店を抜け出す相談をするあたりからバックに不穏な音楽が流れます。
早くも遅くもない速度のマイナーな曲に電子音が入るというフレーズが何度も繰り返され 後半はドラムが控えめにリズムを刻みます。
私にはそれが心臓のリズムのように思えました。前半の電子音は心の揺れ なのかもしれません。
このBGMは二人の会話シーンや榊サンのモノローグのシーンに必ずと言っていいほど使われています。
冒頭二人が出会う前にも似たようなサウンドが挿入されているのですがそれには不穏さ妖しさは感じられなくて榊の平常心(?)を表しているのかなと思いました。
他にも風に揺れる草を思わせるような曲とか。いい作品の音楽は やはりそれだけでもいいものでです。
是非 音楽も気にして聴いてみてくださいね。
■■■◆◆about impressions
”嵐のあと”はすがすがしい青空になるものです。
それが最後のシーンなのかな。となると”嵐”はそれまでの部分ですね。榊の心の中を吹き荒れる風です。
あぁ それだけではない か。。。ノンケの岡田の心にだって風は吹き荒れたはず。
お互いには見せ合うことのない心の中の嵐。聴きごたえがありました。
だからこそ ですが。この作品は何度も聞きたくなる作品です。
初めて聴いたときから随分と時間が経ちましたが その後も思い出しては聴き直しているのです。
が…そのたびに”あれ?”って思います。
それは私の中で榊の声は森川さんの声ではなく違う声優さんの声になっているからなのです。
多分 私の中の榊のイメージと森川さんの声が作り出す榊のイメージに多少のギャップがあるのだと思うのです。この現象は私の中ではよくあることです。
つまり 先に原作を読むことで 自分の中でキャラクターイメージが出来上がってしまうからです。
そのキャラクターイメージとCD化されたときの声優さんの声が多少違っていると 後で勝手に脳内変換してしまうのでしょう。
これは決して制作サイド批判ではありません。ましてや森川さん批判などでもありません(笑)。
先に原作を読むことで起こりうるマイナス面があるよ って話しです。そんなわけで 先に読むか先に聴くか ってことならば断然”先に聴く”をお勧めします。
もちろん人それぞれではありますけれどもね。